伊知郎の紙芝居

こんばんは、久しぶりに今昔物語を書いて見ます。
この今昔物語は少なくとも、950年ほど前に書かれたもので、その頃に
思いを置いて、現代と比較して、考えると面白いと思います。
いずれも、私の、つたない訳ですので、よろしく、お願い申し上げます。
 
 
医師の家に行き、腫れ物をなおして逃げた語

 世俗部巻24話第8話 前編
 
今は昔、すぐれた医師がありました。この人の右に出る人がないので、患者はみんな、この医師のところにあつまりました。
 
或る時、この医師のところへ大変着飾った衣装をつけた女の人の、その衣装が車の外にちらちら、はみだしていました。
医師は「どちらさまの車でしょうか?」と聞きますが、どんどん、車を中へ入れるのでした。
医師は車に近づいて、「どなた様でしょうか?また、なんの御用でございましょうか?」と尋ねるがそれには応えず、「どこか、いいところを御貸しください。」と愛嬌をふりまくようにいいましたら、もともと、この医師はこんなのに嬉しくなるような人でしたので、奥の方のひとけのない、隅のほうの部屋を、急いで掃き清め、屏風をたて、畳をしいて、
よういをいたしました。女は、扇で少し顔を隠して降りて、部屋へ入りました。他のお供の人はなく、拾五六才の女の童が蒔絵の櫛の箱を持って降りてそれに続きました。
その時、医師は「これは、どういうかたの、どういうことなのですか、早く、云ってください。」と申しますと、
女の人は「こちらへ入ってください。恥ずかしいことですがお話しいたします。」といいますので、医師ははいり、その女と対面いたしますと年は三十ぐらいで、顔つきをはじめ、目、鼻、口、ここが悪いというところがなく、きれいで、大変長い髪をしていました。いい女らしい、香りもいたしますし、たいへん、いい衣をきていましたので、恥ずかしがるところなんぞ、あるようにおもえませんでした。
ふしぎだなあと思いましたが、体がわるいなら、自分の名誉にも関わることだから、
どうしても、治さなければと思いました。
年で歯もなく、しわのある顔でも、にっこり笑っていました。それに医師は嫁さんをなくして、三四年になりますので、心が余計にわめくのでした。
この女のひとが云うには「この世は浮世ですから、いろいろありますが、自分の命の惜しさには恥をもかえりみず、どんなことをしてでもと思い、まいりました。
この私を生かすも、殺すも、あなたのお心次第です。私の身を、あなたにお任せいたします。」と云って泣きますので、医師は可愛そうに思い、「どうしたのですか?」といいますと、女は、袴のももを開いてみせました、ももは雪のように白ろかったのですが少し腫れていました。その腫れがそこだけではわかりませんので、袴の腰紐をとかせて、前の方をみますと、毛のなかでみえません。医師は手でそこを探しますとその辺も腫れていました。こんどは右、左の手で掻き分けてみましたら、これは慎まねばならないものにたっしました。

(本文はこのようになっています、女、袴の股立をひき開けて見すれば、股の雪のように白きに少し面腫れたり。その腫頗る心得ず見ゆれば、袴の腰をとかしめて前の方を見れば、毛の中にて見えず。然れば頭、手を以ってそこを捜れば、辺りにいと近くはれたる物あり。)
この続きは、次にいたします、みなさんの感想など、お聞かせいただければ、伊知郎、非常に感激いたすものであります。